「今年は売上が1,000万円を超えそう。何か変わるの?」
個人事業が順調に伸びてくると、多くの方がこの「1,000万円」という数字を気にし始めます。

売上が1,000万円を超えると、消費税の納税が始まるきっかけになります。ただし、納税が始まるのは超えた年ではなく、原則として2年後です。また、インボイスに登録しているかどうかでも話が変わります。

この記事では、売上1,000万円を超えたときに知っておきたい消費税のルールと、今のうちにやっておきたいことをまとめました。

売上1,000万円を超えると、2年後から消費税の納税が始まる

消費税を納める義務があるかどうかは、原則として2年前(基準期間)の売上で決まります。個人事業主の場合、基準期間は「前々年」です。

年売上消費税の納税
2026年1,100万円(1,000万円を超えた)まだなし
2027年—まだなし
2028年—納税が始まる(2026年の売上で判定)

※インボイスに登録していない(免税事業者の)場合の例です。

つまり、売上が1,000万円を超えてから実際に納税が始まるまで、準備の時間が約1年あるということです。この時間をどう使うかが大切です。

判定のときに気をつけたいこと

  • 判定に使うのは、消費税がかかる売上(課税売上高)です。土地の売却など、消費税がかからない収入は含みません。
  • 免税事業者だった年の売上は、消費税分を差し引かずに、受け取った金額のままで判定します。
  • 例外として、前年の前半(1月〜6月)の売上が1,000万円を超え、さらにその期間に支払った給与も1,000万円を超えた場合は、1年早く納税が始まります。

「2割特例」、「3割特例」は、売上1,000万円を超えると使えなくなる

取引先のためにインボイス発行事業者に登録している方は、売上が1,000万円以下でも、すでに消費税を納めています。そして多くの方が、納める税額を売上にかかる消費税の2割にできる「2割特例」を使っています。

ところが、この2割特例は、基準期間の売上が1,000万円を超えると使えません。売上が1,000万円を超えると、2年後から納める税額が大きく増える可能性があるのです。

なお、2割特例を使えるのは、個人事業主の場合2026年分の申告までです。その後、2027年分・2028年分は、納める税額を売上にかかる消費税の3割にできる「3割特例」が個人事業主に設けられています。3割特例も、基準期間の売上が1,000万円を超えると使えません。

納める消費税の計算方法は主に3つ

消費税を納めることになったら、計算方法を選ぶ必要があります。どの方法を選ぶかで、納める金額が大きく変わります。

計算方法納める消費税主な条件
原則(本則課税)売上にかかった消費税 − 仕入や経費で支払った消費税インボイスなどの保存が必要
簡易課税売上にかかった消費税 × 業種ごとの割合
(サービス業なら50%など)
基準期間の売上が5,000万円以下で、事前の届出が必要
2割特例・3割特例売上にかかった消費税 × 20%(3割特例は30%)インボイス登録で課税事業者になった人で、基準期間の売上が1,000万円以下

具体的な数字を用いた試算例(説明のために設定したモデルケースです)

サービス業で、売上が税抜1,000万円(消費税100万円)、経費で支払った消費税が20万円の場合

  • 原則(本則課税):100万円 − 20万円 = 80万円
  • 簡易課税(サービス業は50%):100万円 × 50% = 50万円
  • 2割特例:100万円 × 20% = 20万円(使える場合)

経費が少ないサービス業などでは、簡易課税を選ぶと納める税額が少なくなることが多くあります。ただし、簡易課税は使いたい年が始まる前までに届出が必要で、一度選ぶと原則2年間は変更できません。大きな設備投資を予定している場合などは、原則の方が有利になることもあるので、事前に比べておくことが大切です。

法人化すると、消費税はどうなる?

売上1,000万円は、法人化を考え始めるタイミングでもあります。以前は「法人化すると最初の2年間は消費税が免除される」ことが、法人化の大きなメリットとされていました。

確かに、資本金1,000万円未満で設立した会社は、基準期間がないため、原則として1期目は消費税の納税がありません。しかし、次のような場合は、設立直後から納税が必要になります。

  • 取引先のために、会社としてインボイス発行事業者に登録する場合
  • 1期目の最初の6か月の売上が1,000万円を超え、さらにその期間に支払った給与も1,000万円を超えた場合(2期目から納税が必要になります)

取引先が事業者中心の方は、消費税の免除を法人化の理由にするのは難しくなっています。法人化を考えるときは、消費税だけでなく、所得税や社会保険料も含めて比べることが大切です。
→ 法人成り、法人化はいつがいい?「所得800万円」の目安と、税金だけで決めてはいけない理由

売上1,000万円を超えたら、やっておきたいこと

やることポイント
① 納税が始まる年を確認するいつの売上で判定されるかを確認し、2年後に向けて準備する
② 計算方法を決める簡易課税を選ぶなら、使いたい年が始まる前までに届出を出す
③ 価格や見積りを見直す消費税分を価格にどう反映するか、取引先との話し合いも含めて考える
④ 納税資金を準備する消費税は売上と一緒に預かるお金。前年の納税額が一定額を超えると、年の途中で前払い(中間納付)も必要になる
⑤ 法人化も一緒に検討する消費税、所得税、社会保険料をまとめて比べると、ベストなタイミングが見えてくる

売上が1,000万円を超える頃には所得も大きくなっているケースがあります。そのような場合は法人化を検討するいい機会と言えるかもしれません。

まとめ

  • 売上が1,000万円を超えると、原則として2年後から消費税の納税が始まる
  • 「2割特例」「3割特例」は、売上1,000万円を超えると使えなくなる
  • 計算方法(原則・簡易課税)によって納税額は大きく変わり、簡易課税には事前の届出が必要
  • 法人化しても、インボイスに登録すれば消費税の免除はほとんど期待できない

売上1,000万円は、消費税だけでなく、事業の形を見直すきっかけにもなる数字です。準備の時間がある今のうちに、ご自身の数字で確認しておきましょう。

法人化するべきか、数字で一緒に判断します

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※この記事は執筆時点の制度にもとづいています。実際の判定や税額は、お客様ごとの状況によって異なります。