こんにちは。札幌の税理士の青木です。

法人を設立する際に資本金をいくらにするべきかで悩むことは少なくありません。

「そもそも資本金って何?」そのような疑問を持つ方もいるかもしれません。

この記事では新規創業において資本金がどういったものなのかを解説します。

これから新規創業をお考えの方は是非参考にしてみてください。

資本金って何?

資本金とは株主や投資家が出資したお金のことです。

事業を行う上での元手資金とも言えます。

株主が出資したお金ですので借入金等と違い会社は株主に対しお金を返済する必要はありません。

そのため、企業の規模や体力を表す一つの指標として扱われることもあります。

資本金は使ってよい

「資本金は使ってよいのですか?」このような質問をよく受けるのですが、資本金は使って構いません。

資本金は会社の資金ですので、設立当初は会社の経費を資本金から支払うことになります。

そのため、極端に少ない資本金で会社を設立してしまうと早々に資金がショートしてしまうので事業に必要な運転資金を考慮したうえで資本金を決めることをおススメします。

資本金1円でも会社設立はできる

会社法の施行により最低資本金制度がなくなりました。

かつては株式会社なら1,000万円以上、有限会社なら300万円以上の資本金が必要でした。

資本金1円であっても会社の設立はできるようになりましたが、あまりにも低い金額の資本金はあまりお勧めできません。

先ほどご説明した運転資金が不足してしまう懸念や、後ほどご説明する許認可や信用などへの影響もあります。

200万円から500万円がボリュームゾーン

国税庁の令和2年度標本調査によると200万円から500万円の資本金の会社が多いです。

約280万社のうち114万社が200万円から500万円の資本金で全体の40%程度を占めています。

1,000万円以下だと消費税がお得はもう古い

資本金1,000以下だと設立後2年間は消費税の免税事業者になることがあります。

そのため資本金1,000万円以下で設立すると節税になるなどといわれてきました。

しかし、インボイス制度の導入により本来は免税事業者である場合でもインボイスを発行するために課税事業者にならなければいけない状況というのが多くあります。

そのため資本金1,000万円以下であっても消費税の節税にならないケースが今後は増えることになるでしょう。

インボイス制度や消費税について詳しく知りたい方はコチラもご覧ください。

資本金の要件がある許認可も

業種によっては許認可に資本金の要件がある場合があります。

その場合は要件を満たす資本金で決める必要があります。

例えば利用運送業であれば300万円以上の資本金が求められますし、建設業であれば500万~2,000万円以上、旅行業であれば300万円~3,000万円以上と必要な要件が異なります。

あらかじめ必要な許認可について必要な資本金を確認しましょう。

資本金が大きいほうが信用が大きい?

一般的には資本金が大きいほうが信用が大きいです。

なぜなら資本金は返済が不要な資金であるため、資本金が大きい会社は資金的な体力が強いと言えます。

資金的な体力があれば簡単には倒産しないので信用につながると言えます。

ただし、資本金が少ないことのみをもって、その会社の信用がないというわけではないのでご注意ください。

現金以外も資本金にできる現物出資

資本金は現金だけでなく不動産等を出資することができます。

このことを現物出資といいます。

現金で出資する場合と異なり、現物出資をすると譲渡所得の課税対象となることに注意しましょう。

現物出資は税負担だけでなく、手続き面でも手間がかかります。

受入れ資産の評価について妥当性を検証しなければならず、現物出資はあまり一般的ではありません。

住民税均等割への影響

赤字の企業であっても法人住民税の均等割という税金は納付しなければいけません。

法人住民税の均等割は資本金の大きさによって変わります。

法人住民税は都道府県に納付する法人県民税と市町村に納付する法人市民税があります。

法人県民税の均等割は次の金額になります。(北海道の場合)
なお、法人住民税は自治体によって税率、税額が異なりますのでご注意ください。

資本金等の額均等割の額
1,000万円以下2万円
1,000万円超、1億円以下5万円
1億円超、10億円以下13万円
10億円超、50億円以下54万円
50億円超80万円

法人市民税の均等割は次の金額になります。(札幌市の場合)
法人県民税と違い従業者数の要件もあります。

資本金等の額均等割の額
1,000万円以下(従業員50人以下)5万円
1,000万円以下(従業員50人超)12万円
1,000万円超、1億円以下(従業員50人以下)13万円
1,000万円超、1億円以下(従業員50人超)15万円
1億円超、10億円以下(従業員50人以下)16万円
1億円超、10億円以下(従業員50人超)40万円
10億円超、50億円以下(従業員50人以下)41万円
10億円超、50億円以下(従業員50人超)175万円
50億円超(従業員50人以下)41万円
50億円超(従業員50人超)300万円

設立時の登録免許税

設立登記に係る登録免許税は資本金の額に応じて金額を計算します。

資本金が大きい会社を設立すると登録免許税も大きくなります。

株式会社資本金の1,000分の7(15万円に満たない時は15万円)
合同会社資本金の1,000分の7(6万円に満たない時は6万円)


自治体によっては登録免許税が半額:特定創業支援事業

特定創業支援事業による支援を受けた場合は設立登記の登録免許税が半額になります。

特定創業支援事業は市区町村ごとの取り組みとなっています。

設立する自治体で特定創業支援事業を行っているか確認してみてはいかがでしょうか?

役員と出資者は別でもOK

新規創業の際に、役員は必ず出資者(株主)にならなければならないという勘違いをしている方がいますが、役員は出資者にならなくても大丈夫です。

中小企業の多くがオーナー社長であり、100%株主でかつ代表取締役であるため勘違いしているのかもしれません。

役員=経営、株主=所有なので別々でも問題ありません。

創業社長はどのくらい出資すべき

創業社長はどのくらい出資すべきでしょうか?

通常は出資額に応じて議決権を持つことになり、あまりにも少ない金額を出資した場合だと創業社長が意思決定をすることが困難になります。

結論から申し上げますと最低でも1/3以上、できれば1/2超の株式を保有することをおススメします。

1/3以上保有していれば特別決議を阻止することができます。

特別決議とは定款変更や営業譲渡、解散や合併契約の承認など企業にとって重要な決定事項です。

1/2超保有していれば株主総会の普通決議が単独で可決することができます。

役員報酬や剰余金の配当について決めることができるようになるので非常に重要です。

1/3以上特別決議を単独で阻止(定款変更、事業譲渡、解散合併等)
1/2超株主総会の普通決議を単独で可決(役員報酬の変更、剰余金の配当など)

まとめ

いかがでしたでしょうか?

資本金をどのくらいにするかで様々な面で影響があることがご理解いただけたのではないでしょうか?

資本金はいくらであっても設立はできますが、設立後の事業の運営を見据えて資本金を決めることをおススメします。

この記事が新規創業の際の参考になれば幸いです。