この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは。札幌市豊平区の税理士の青木です。

銀行融資において自己資本が重要ということは聞いたことはありませんか?
この記事では自己資本とはどういったものか?なぜ重要なのかを解説します。

自己資本とは?自己資金とは違う

自己資本とはいったい何を指しているのでしょうか?
自己資本と似た言葉として自己資金というものがありますが、これらは全く違うものです。

自己資本とは企業の総資産のうち返済する必要が無い資金のことです。
このように言うと非常に難しく感じてしまいますが、大まかにいうと株主から払い込まれた資本金と企業の利益の累積である利益剰余金から構成されています。
また自己資本とは異なり他人から調達した資金(他人資本)の代表的なものとしては借入金等があります。

それに対し自己資金とは手許現金や預金など実際に金銭として企業が保有している資金を指します。

そのため自己資本が実際の現金預金より少ないということは珍しいことではありません。

なぜ自己資本が重要なのか?

自己資本は返済する必要が無い資金であるということは先ほど説明した通りです。
別の見方をすると自己資本が大きい会社は企業として体力があり、財務基盤が強固といえます。

銀行が融資をするにあたって最も注意することは回収できなくなることです。

自己資本が大きく財務基盤が強固な会社は、回収不能になるリスクが少ないため、自己資本は非常に重要です。

自己資本比率とは?

自己資本比率とは次の式で計算されます。


自己資本比率

自己資本比率=自己資本÷(自己資本+負債)

計算例:
自己資本 450万円
負債 550万円
自己資本比率 450万円÷(450万円+550万円)=45%

中小企業の自己資本比率について30%を超えると安定企業と言われることがあります。
ただし、銀行融資において高い評価を受けるためには60%以上あるのが理想的とは言えます。

自己資本比率は業種によっても異なります。次の表は業種ごとの自己資本比率になります。

製造業50.8%
小売業43.9%
卸売業41.6%
出典:経済産業省企業活動基本調査

自己資本を用いて安全性を表す指標

さきほどご説明した自己資本比率以外にもあります。
いずれも企業の安全性を表す指標となります。

ギアリング比率

ギアリング比率は自己資本に対する他人資本(負債)の割合を表します。
自己資本に対して何倍の他人資本を使用しているかを指し示す比率です。

この比率が高いとレバレッジを効かせているといえますが、その反面自己資本比率が低くなり安全性に影響を及ぼすとも言えます。


ギアリング比率

ギアリング比=負債÷自己資本

ギアリング比率は100%以内が理想的とされ銀行融資においても高い評価を見込めるものとなっています。
もし、ギアリング比率が250%を超えるようであれば、高い評価を得ることは難しくなります。

計算例:
負債 400万円
自己資本 1,000万円
ギアリング比率 400万円÷1,000万円=40%

固定長期適合率

固定長期適合率とは自己資本と固定負債の合計に対する固定資産の割合を表したものです。

固定資産は事業の資金を生み出す源泉となるものです。しかしながら固定資産へ投資した資金が収益になるには時間がかかります。

固定資産は短期的には返済しない自己資本や固定負債でまかなわれることが理想と言えます。

固定長期適合率

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)

固定長期適合率は100%を超えると固定資産の調達に短期的に返済する負債でまかなっていることとなります。当然、融資においても低い評価がされます。

融資において高い評価を受けるには50%以下にすることが理想と言えます。

まとめ

自己資本と自己資金の違いはご理解いただけたでしょうか?

自己資本=返済不要の株主からの払込資本+企業の内部留保の累積
自己資金=実際に現金預金として保有している資金

このような違いがあります。

自己資本の大きい会社は財務基盤が安定しているので銀行融資においても高い評価を受けます。

自己資本を大きくすることは簡単ではありません。
毎期毎期、利益を積み重ねた結果として自己資本が大きくなります。