この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは。札幌市豊平区の税理士の青木です。

フリーランスなどの個人事業主の確定申告において必要経費となるのは事業に関するものだけです。

事業に関する消耗品や交通費などは当然必要経費となります。事業で使っている自動車や機械などはその耐用年数にわたり費用処理をします。

では、開業前に購入した自動車については経費にできるでしょうか?

実は開業前に購入したものであっても経費にすることができるんです。

減価償却費とは?

自動車や機械などの減価償却資産は購入した時点で購入した金額の全額が経費になるわけではありません。

減価償却費といってその資産の耐用年数にわたって費用となります。

耐用年数は法定耐用年数といって、その資産の種類や用途ごとにきまっています。

減価償却費についてはこちらで詳しく解説しています。

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開業前に購入した場合の計算方法

開業前に購入した場合であっても減価償却費を計上できるケースがあります。減価償却費の計算方法について確認しましょう。

未償却残高を計算

未償却残高とは将来経費にできる金額を表しています。購入してから事業に使い始めるまで期間が経過しているため、その分だけ価値が減少しているといえます。

その減少した価値を控除した金額が未償却残高といえます。

未償却残高の計算方法

その資産の取得価額ー事業に使っていなかった期間の減価の額=未償却残高

ここでポイントとなるのは「事業に使っていなかった期間の減価の額」です。この金額はその資産の耐用年数の1.5倍に相当する年数で、業務に使っていなかった期間の減価償却費を旧定額法で計算したものです。

事業に使っていなかった期間に1年未満の端数があるときは、6か月以上の端数は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨てます。

また、1.5倍した年数に1年未満の端数があるときはその端数は切り捨てます。

なお、新車の自動車の法定耐用年数は6年です。これを1.5倍すると9年になります。

旧定額法による減価償却費の計算とは取得価額×90%×償却率となっており、この減価償却費は1年あたりの価値の減少を表しています。旧定額法における9年の償却率は0.111です。

計算例
取得価額:2,000,000
耐用年数:6年→6×1.5=9 償却率0.111 
経過年数:2年3か月→2年
未償却残高:2,000,000ー2,000,000×0.9×0.111×2=1,600,400

減価償却費を計算

未償却残高が算出できたら次は減価償却費を計算します。

減価償却費の計算に用いる金額は取得価額と償却率です。(定額法の場合)
フリーランスなどの個人事業主の場合、通常は定額法で減価償却を行います。
なお、法人の場合は定率法を使用するのが一般的です。

先ほどの例の場合、取得価額は2,000,000です。定額法で6年の償却率は0.167です

計算例
減価償却費:2,000,000×0.167=334,000

もし年の中途で事業を開始した場合は月割計算を行います。その際に1月未満の端数が生じた場合は1月として取り扱います。

7月に事業を開始した場合は6か月分の減価償却を行います。

334,000×6/12=167,000円

プライベートにも使っている場合は家事按分

事業だけでなくプライベートでも自動車を使っている場合、事業に使っている割合を合理的に按分することができれば経費にすることができます。

合理的な按分については明確な基準はありませんが、自動車の場合走行距離や時間、日数などで按分することが合理的と言えるでしょう。

例えば年間5,000キロ走行して事業に使った距離が4,000キロの場合、減価償却費の4,000/5,000が経費に算入されます。

家事按分についてこちらに詳しく解説しています。

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中古資産の耐用年数

先ほどご説明した通り資産の種類や用途ごとに法定耐用年数が決まっています。一般的な自動車の場合は6年です。

中古車の場合は法定耐用年数である6年で減価償却費を計算しません。使用可能期間として見積もられる年数により減価償却を行います。

ただし、中古車の使用可能年数を見積もることは困難なため実務上は簡便法という計算方法で減価償却費を計算します。

法定耐用年数の全部を経過している場合
その法定耐用年数の20%に相当する年数

法定耐用年数の一部を経過している場合

その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年洲の20%に相当する年数を加えた年数

こられの年数に1年未満の端数があるときはその端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合は2年とします。

計算例
法定耐用年数の全部を経過している場合
法定耐用年数:6年
経過年数:10年
耐用年数:6×20%=1.2→2年

法定耐用年数の一部を経過している場合
法定耐用年数:6年
経過年数:2年
耐用年数:6-2+2×20%=4.8→4年

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自動車以外も同じ

これまでの説明は自動車についてでしたが、建物や構築物、工具、機械などでも取り扱いは同じです。

事業に使っていない期間に相当する価値を減額したうえで減価償却を行います。

まとめ

事業を始める前に購入した自動車などの減価償却資産であっても経費にすることができます。

重要な点は取得した金額がわかる資料があることと事業に使っている実態があることです。

購入した金額がわからない場合は経費に算入する金額を算出することができませんし、事業に使っている実態が無い場合はそもそも経費に含めることができません。

フリーランスなどの個人事業主として既に事業を行っている方や、これから起業しようとお考えの方については経費にできるか確認することをおススメします。