この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは。札幌市豊平区の税理士の青木です。

フリーランスや個人事業主の方が節税を考えるときに「小規模企業共済」と「経営セーフティ共済」という選択肢があります。

「小規模企業共済」はフリーランスや小規模法人の役員に対する退職金制度であるのに対し、「経営セーフティ共済」は倒産防止共済ともいい取引先の倒産による連鎖倒産を防止する制度です。

これらの共済は違いがあり節税策として選択する場合には、それぞれの特性を理解していないと資金負担が増える場合もあります。

この記事では「小規模企業共済」と「経営セーフティ共済」の違いについて解説します。

小規模企業共済、経営セーフティ共済の比較

小規模企業共済と経営セーフティ共済の比較をしました。詳細については後述しておりますのでごらんください。

小規模企業共済経営セーフティ共済
目的退職金連鎖倒産の防止
短期的な節税
長期的な節税出口戦略が必要
元本割れしないための期間20年40か月
月額掛金千円~7万円5千円~20万円
掛金より受取額が大きくなるか×
法人成りの際に引き継げるか

短期的な節税効果

短期的な節税効果については小規模企業共済も経営セーフティ共済も違いはありません。

どちらも掛金の分だけ所得を圧縮する効果があります。

ただし、小規模企業共済は所得控除、経営セーフティ共済は経費となるという点に違いがあります。

所得控除は確定申告の際の控除であり決算書には記載されません。それに対し経営セーフティ共済は保険料として事業の必要経費となる点が異なります。

短期的な節税効果:両者に違いは無い

所得控除と経費の違いについては、所得税の計算方法について理解が必要です。こちらの記事に所得税の計算方法について解説しております。

📖あわせて読みたい📖
【確定申告】フリーランス、個人事業主の税金計算の方法

長期的な節税効果

長期的な節税効果については違いがあります。

ここでいう長期的とは小規模企業共済においては共済金を受け取る時点、経営セーフティ共済共済においては解約手当金を取得する時点で考えます。

小規模企業共済は受け取り方を選べる

小規模企業共済は受取金を一括分割かを選べます。

一括の場合は退職所得として、分割の場合は公的年金等の雑所得として所得税を計算します。

いずれの場合であっても税負担は少ないものとなっています。退職所得と公的年金等の雑所得についての税額計算の方法を確認しましょう。

退職所得の計算方法

退職所得は分離課税といって他の所得と合算しないで税額を計算する点に特徴があります。

(収入金額ー退職所得控除額)×1/2×税率ー控除額

注目していただきたいのは退職所得控除額と1/2をかけるという点です。これにより税負担が少なく抑えられます。後述しますが経営セーフティ共済は事業所得として収入金額の全額が課税されるのに比べ税負担の面において優遇されているといえます。

退職所得控除額は小規模企業共済の組合員であった年数で変わります。

組合員であった年数退職所得控除額
20年以下40万円×組合員であった年数
20年超800万円+70万円×(組合員であった年数ー20年)

組合員であった年数に1年未満の端数があるときは1年として端数を切り上げます。また退職所得控除額が80万円未満の場合は80万円とします。

具体例
組合員であった年数:10年
退職所得控除額:40万円×10=400万円


退職所得の税率は次のようになっており所得が大きければ大きいほど税率も上がります。

課税退職所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

課税退職所得金額とは退職所得控除額を引いて1/2をかけた後の金額です。

計算例
収入金額:10,000,000
組合員であった年数:15年
課税退職所得金額:(10,000,000ー15×400,000)×1/2=2,000,000
所得税:2,000,000×10%ー97,500=102,500

公的年金等の雑所得の計算方法

一括受け取りの場合は退職所得として計算するため他の所得に関係なく税額計算ができるのは先ほどご説明した通りです。

公的年金等の雑所得は総合課税といって他の所得と合算して税額計算をします。そのため公的年金の雑所得だけでは税額計算ができない場合があります。

公的年金等の雑所得は他の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下、1,000万円超2,000万円以下、2,000万円超で計算方法が変わります。

また、年齢が65歳未満と65歳以上でも税額計算の方法が変わる点に特徴があります。

今回は合計所得金額が1,000万円以下の場合についてご紹介します。

受け取る人の年齢が65歳未満の場合

公的年金等の収入金額の合計額公的年金等に係る雑所得の金額
60万円以下0円
60万円超 130万円未満収入金額の合計額-60万円
130万円以上 410万円未満収入金額の合計額×0.75ー27万5千円
410万円以上 770万円未満収入金額の合計額×0.85ー68万5千円
770万円以上 1,000万円未満収入金額の合計額×0.95ー145万5千円
1,000万円以上収入金額の合計額ー195万5千円

受け取る人の年齢が65歳以上の場合

公的年金等の収入金額の合計額公的年金等に係る雑所得の金額
110万円以下0円
110万円超 330万円未満収入金額の合計額-110万円
330万円以上 410万円未満収入金額の合計額×0.75ー27万5千円
410万円以上 770万円未満収入金額の合計額×0.85ー68万5千円
770万円以上 1,000万円未満収入金額の合計額×0.95ー145万5千円
1,000万円以上収入金額の合計額ー195万5千円

計算例
受け取る人の年齢:68歳
収入金額:350万円
所得金額:350万円×0.75-27万5千円=2,350,000円

小規模企業共済についてはこちらに詳しく解説しています。

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【確定申告】フリーランスが節税するなら小規模企業共済で

経営セーフティ共済は出口戦略が必要

経営セーフティ共済の解約手当金は事業所得の収入として課税の対処となります。

小規模企業共済の場合は退職所得であっても公的年金等の雑所得であっても控除などにより税負担が少なくなっていましたが、経営セーフティ共済については控除などはなく収入金額がそのまま課税対象となります。

所得税は超過累進税率といって所得が大きければ税率も大きくなります。

そのため解約時期によっては税負担が増えてしまうことがあります。

ではどのようにすれば税負担が少なく済むでしょうか?

赤字の年に解約する場合や大きな必要経費が発生する年に解約をすれば税負担を抑えることができます。

経営セーフティ共済には出口戦略が必要です。

経営セーフティ共済についてこちらに詳しく解説しています。

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【フリーランスの節税】経営セーフティ共済(倒産防止共済)で安心

長期的な節税についての結論

長期的な節税効果:小規模企業共済の方が優れている

特に一括で受け取る際は退職所得控除と1/2課税のため税負担は少なくなります。

元本割れについて

小規模企業共済も経営セーフティ共済も加入期間が短いと元本割れをする場合があります。

小規模企業共済については240か月(20年)未満で任意解約をした場合、経営セーフティ共済については40か月未満で元本割れをする場合があります。

月額掛金について

小規模企業共済の月額掛金は1,000円から7万円の範囲内で500円単位で選択することができます。

経営セーフティ共済については月額掛金を5,000から20万円までの範囲で選ぶことができます。

月額掛金の最高額は経営セーフティ共済の方が大きいです。そのため短期的な節税や決算対策には経営セーフティ共済の方が優れているといえます。また、前納という方法を使えばより効果的になります。

受取金額が掛金より大きくなるのか?

小規模企業共済は掛金より共済金額が大きくなることがあります。

それに対して倒産防止共済は掛金より解約手当金が大きくなることはありません。

法人成りする場合の引継ぎ

フリーランスや個人事業主が事業を株式会社等の法人化することを「法人成り」といいます。

法人成りをした場合、小規模企業共済、経営セーフティ共済ともに引き継ぐことができます。

ただし、法人成り後に加入資格を満たす必要があります。

フリーランスなどの個人事業主は所得税の対象です。所得税は超過累進税率といって所得が大きければ大きいほど税率も大きくなります。

所得が大きい個人事業主は法人成りをすると節税になる場合があります。

法人成りについてはこちらに詳しく解説しています。

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【法人成りのメリット】所得の分散で節税に

まとめ

いかがでしたでしょうか?節税策といってもそれぞれの違いがあることはご理解いただけたでしょうか?

短期的な節税であればどちらも掛金が所得を圧縮するという意味では同じです。ただし月額掛金の最高額については「経営セーフティ共済」の方が大きいです。そのため年末になって思いのほか利益が出た際には使い勝手が良いといえます。

長期的な節税であれば「小規模企業共済」の方が有利と言えるかもしれません。特に一括で共済金を受け取る場合は退職金として課税されるため税負担が少ないです。

長期的な節税や資産運用なら「小規模企業共済」、短期的な節税策なら「経営セーフティ共済」と言えるかもしれません。

ただし、経営セーフティ共済には出口戦略が必要な点は注意しましょう。