この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは札幌の税理士の青木です。

フリーランスや個人事業主の方の中には確定申告における税金計算に苦手意識を持っている方もいるかもしれません。

所得税の計算がどうやって行うものなのかについて解説いたします。

この記事が確定申告のお悩みを解決できれば大変喜ばしいです。

収入と所得の違い

税額計算の前に収入と所得の違いについてご存じでしょうか?

なんとなく意味は分かるけど違いはよくわからない、そのような方もいるかもしれません。

税金は所得に対して課されるものなので、この違いをはっきりしておきましょう。

収入とはおおざっぱにいうと売上と等しいです。事業者の手元に入ってくる金額のことをいいます。

それに対して所得とは売上から経費を引いた利益のことをいいます。

さきほどもご説明しましたが所得税は利益に対して課されるものなので税額計算においては所得が重要になります。

収入=売上金額
所得=売上金額ー必要経費

なお必要経費とは事業に関連のあるものに限られます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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収入から経費を引いて所得金額を計算

収入から経費を引いて所得金額を計算しましょう。

事業と関係のある支出でなければなければ経費として取り扱うことができません。

ただし仕事とプライベートの両方に使っているものについては合理的に按分できる場合はその割合に応じて経費にすることができます。

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所得控除金額を反映

収入から経費を引いた金額からさらに「所得控除」という控除を受けることができます。

所得控除は15種類あります。それぞれについて解説いたします。

雑損控除

災害や盗難、横領によって資産に損害を受けた場合や、災害に関連して支出をした場合は一定額の控除を受けることができます。

この控除のことを雑損控除といいます。

雑損控除の対象となる資産は個人事業主本人だけでなく生計を一にする配偶者や総所得金額が48万円以下の親族の保有する資産を含みます。

雑損控除は次の金額のうち大きな金額が対象となります。

①(損害金額+災害等関連支出額ー保険金)ー総所得金額×10%
② 災害等関連支出額ー5万円

医療費控除

納税者本人又は本人と生計を一にする配偶者や親族のためにその年中に支払った医療費のうち一定額を所得から控除することができるという制度です。

その年中に支払った医療費ー保険金などで補填される金額ー10万円(※)
※その年の総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%

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社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除

社会保険料控除は納税者本人又は本人と生計を一にしている配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に受けることができる控除です。

控除金額は支払った社会保険料の金額の全額となります。

社会保険料控除の対象は健康保険や介護保険に限らず国民年金や労働保険料なども含まれます。

小規模企業共済等掛金控除は小規模企業共済法の規定による共済掛金、確定拠出年金法の個人方年金加入者掛金などを支払った場合にその掛金相当額の控除を受けることができます。

iDeCoは小規模企業共済等掛金控除の対象です。

小規模企業共済等掛金控除は社会保険料控除と違い親族の共済金を支払ったとしても控除を受けることができません。

社会保険料控除についてはこちらに詳しく解説しています。

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生命保険料控除

納税者本人が保険金などの受取人を本人または配偶者、その他の親族とする生命保険料等を支払った場合は所得金額から一定の控除額を控除することができます。

確定申告の際は保険会社から送られてくる控除証明書が必要となります。

地震保険料控除

納税者本人や本人と生計を一にする配偶者や親族の所有する家屋で常時居住用としているもの又は生活に通常必要な家財などを対象とした保険を支払っている場合は一定の控除を受けることができます。

生命保険料控除と同様に保険会社から送られてくる控除証明書を準備しましょう。

寄付金控除

国や地方公共団体、特定公益増進法人などに特定寄付金を支出した場合は次の金額を所得から控除することができます。

①特定寄付金の合計額ー2,000円
②総所得金額×20%ー2,000円
③ ①と②のうちいずれか少ない金額

障害者控除

納税者又は同一生計配偶者や扶養親族が障害者である場合は1人につき27万円の控除を受けることができます。

ただし、特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円となります。

寡婦控除

納税者が寡婦である場合は所得から27万円を控除することができます。

寡婦とは合計所得金額が500万円以下であり次のいずれかに当てはまる人をいいます。

①夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない人
②夫と離婚した後婚姻をしておらず扶養親族がいる人

ただし、婚姻をしていない場合であっても事実婚の関係にある場合は適用を受けることはできません。

ひとり親控除

納税者がひとり親の場合は所得金額から35万円を控除することができます。

ひとり親とは合計所得金額が500万円以下であり婚姻をしていない又は配偶者の生死が明らかでない場合で生計を一にする子がいる人を言います。

寡婦控除と同様に、事実婚の状態にある場合は適用を受けることができません。

勤労学生控除

納税者本人が勤労学生で合計所得金額が75万円(給与収入で130万円)以下であり、給与所得以外の所得が10万円以下の場合は27万円の控除を受けることができます。

配偶者控除・配偶者特別控除

控除対象配偶者がいる場合は所得金額から一定額を控除することができます。

控除対象配偶者の所得要件は所得金額が48万円(給与収入のみの場合103万円)以下です。

配偶者の所得が48万円超133万円以下の場合は一定の要件を満たせば配偶者特別控除を受けることができます。

扶養控除

控除対象扶養親族がいる場合は一定額の所得控除を受けることができます。

控除対象扶養親族の要件は次の全てに該当する人を言います。

①その年の12月31日において16歳以上である
②配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)
③納税者と生計を一にしている
④合計所得が48万(給与所得のみの場合103万)以下であること
⑤事業専従者でない
⑥他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない

基礎控除

基礎控除は納税者自身の控除額で所得金額に応じて次の金額の控除を受けることができます。

本人の合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超~2,450万円以下32万円
2,450万円超~2,500万円以下16万円
2,500万円超控除なし

税率をかける

所得金額から所得控除額を控除すると課税所得金額が算出されます。

この課税所得金額に所得税の税率を乗じ控除額を加味して所得税を計算します。所得税は累進税率といって所得が大きいほど税率が上がります。

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 330万円以下10%97,500円
330万円超 695万円以下20%427,500円
695万円超 900万円以下23%636,000円
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

計算例
売上金額:900万円
必要経費:100万円
所得控除:100万円
課税所得金額:900万円ー100万円-100万円=700万円

700万円×23%-636,000円=974,000円

青色申告なら最大65万円控除

フリーランスなどの個人事業主が確定申告をする場合は青色申告がおススメです。

青色申告特別控除は次の要件を満たせば最大65万円の控除を受けることができます。

①不動産所得または事業所得が生ずる事業を営んでいる
②複式簿記により会計帳簿を作成している
③貸借対照表、損益計算書を作成し期限内に申告をする
④会計帳簿について電子帳簿保存を行っているまたは電子申告により確定申告を行っている


青色申告特別控除以外にも赤字の繰越や30万円未満の固定資産を費用にすることができるなど青色申告のメリットは多いです。

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利益が大きいと節税効果も大きい

所得税は所得が大きいと税率も大きくなるというのは先ほどご説明しました。

多くの事業者が節税に関心があるかと思いますが、税率が大きい場合と小さい場合では節税効果も異なります。

たとえば100万円の経費を算入できる場合で所得が190万円の場合の節税効果は100万円×5%で5万円の節税効果があります。

それに対し、所得が1,000万円の場合の100万円の経費に対する節税効果は100万円×33%で33万円です。


同じ100万円の所得の圧縮であっても税負担の影響は大きく異なります。

そのため個人事業主が節税を考える場合は税率まで考慮にすべきです。

まとめ

所得税の計算方法は非常に複雑です。

正しく税額計算を行うためには売上と経費をもれなく計上し、受けれる控除を正確に適用を受けることが重要です。

確定申告に苦手意識を持つ方の中には何が経費になるのか、何が控除になるのかを理解していただければ苦手意識が少なくなるかもしれません。