この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは。札幌市豊平区の税理士の青木です。

中小企業の資金繰りにおいて銀行からの融資は非常に重要です。

融資については「設備資金」と「運転資金」の2種類があります。

この記事では「設備資金」について解説します。

設備資金って何?

銀行から融資を受ける際に何に使うために融資を受けるのかを明らかにしなければいけません。
このことを「資金使途」といいます。

事業を行うにあたり必要な機械や建物等の設備の購入を目的としている融資のことを「設備資金」といいます。

設備資金の返済期間はどのくらい?

設備資金は多額であり返済期間が長期間となるケースが多いです。

では、この返済期間はどのような期間となるでしょうか?

返済期間は耐用年数以内とすることが基本となります。

ここでいう耐用年数とは実際に使用できる期間ではありません。

建物や機械等の固定資産は取得した際に購入費用の全額を費用とすることはできません。
その資産に応じた法定耐用年数により減価償却を通じて費用処理を行います。

次の表は減価償却資産の耐用年数の一例です。

資産の種類用途耐用年数
木造建物事務所用24年
木造建物店舗用・住宅用22年
機械食料品製造業用設備10年
機械家具製造業用設備11年
機械パルプ・紙加工品製造業用設備12年

同じ木造建物であってもどのような用途であるかによって耐用年数は変わります。同様に機械であっても用途によって耐用年数が変わるので注意しましょう。

なぜ耐用年数を返済期間の基本とするのか

固定資産は減価償却費として経費になることはさきほど説明した通りです。減価償却費は現金支出の生じない費用という特徴があります。
そのためその分の現金が確保されているため融資の返済に充てることができるから、耐用年数を返済期間の基本とするのです。

やってはいけない注意点

資金使途違反に注意

設備資金はあらかじめどのような設備を購入するかを決めて借入を行います。
そのため、その設備を購入しない場合は資金使途違反となります。

資金使途違反を行ってしまった場合、銀行から一括で返済を求められることがありますので注意しましょう。

資金使途違反なんてどうやったら銀行がわかるのかと思う方も居るかもしれません。
決算書を提出する際に固定資産台帳も提出します。固定資産台帳に購入した設備の記載があるかは確認されます。また、設備を購入した際の領収書の提出も求められる場合があります。

借入前に購入

設備資金の融資を受ける場合に、いつ設備を購入するかは注意が必要です。
設備を購入し、資金が減少したから設備資金を借りようとしても融資を受けることができません。

①融資を受ける
②設備の購入

この順番でなければいけません。

着金前に購入

借入前に設備を購入してはいけないことは先ほどお伝えした通りです。

では融資がおりることが決定し、入金する前に設備を購入する場合には問題があるのでしょうか?

この場合であっても資金使途違反とみなされます。
あくまでも設備を購入するのは融資された資金を使いましょう。

値引きがあった場合

設備の見積もりが300万円であり、融資がおりたとします。
実際に購入する段階で購入先から設備の値引きを受けたとします。

300万円の融資をそのまま受けてしまうと値引き分について資金使途違反とみなされる場合があります。
そのため値引きがあった場合には銀行に相談をしましょう。

返済力があるかはどうやって判断するの?

銀行が融資を行うにあたり最も気にする点は、融資の返済力があるかどうかです。

返済力を測る方法はいくつかありますが、簡単な方法としては「簡易キャッシュフロー」を計算する方法があります。

簡易キャッシュフローとは当期純利益+減価償却費で計算されます。
減価償却費は現金支出のない費用です。

そのため簡易キャッシュフローが融資を返済できる能力と言えます。
簡易キャッシュフローが融資の返済額を下回るような会社では返済に問題が生じる可能性があります。

簡易キャッシュフローは決算書があれば簡単に計算ができるので一度算出してみてはいかがでしょうか?

返済力

まとめ

今回は設備資金についての解説でした。

銀行融資において運転資金と設備資金では考え方が異なるので注意しましょう。

特に資金使途違反や設備の購入時期によっては、せっかく融資がおりても一括返済が求められるケースもあります。