この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは。札幌市豊平区の税理士の青木です。

フリーランスや個人事業主の方の中には親族の保有している建物などの資産を使っている方はいませんか?

自分で保有している建物ではないので、建物に係る費用を必要経費にすることができないとお考えになるかもしれません。

実は一定の要件を満たせば自分の資産でなくても必要経費にできるケースがあります。

生計一親族の建物を無償で使った場合について解説させていただきます。

建物に係る必要経費

建物に係る費用で最も大きなものは減価償却費です。

減価償却費とは建物などの固定資産の取得価額をその資産の耐用年数に応じて必要経費に算入することを言います。

たとえば取得価額2,000万円で耐用年数20年であれば、1年当たりの必要経費は100万円となります。

そのほか、修繕費や固定資産税などが必要経費に該当します。

自分の資産でなくても経費にできる

生計一親族の所有する建物を無償で使用した場合、その建物に係る減価償却費などの費用は必要経費に算入することができます。

たとえばフリーランスなどの個人事業主が生計を一にする親の所有する建物を事務所として利用していたとします。

その場合は建物に係る減価償却費や修繕費、固定資産税等は個人事業主の事業所得における必要経費となります。

生計一と同居は違う

個人事業主が自分で保有していない建物について経費にできるというのは不思議に感じるかもしれません。

ここで重要なポイントは「生計一」という点です。

生計一とは平たく言うと一つの財布で生活をしていることを言います。

単純に同居しているだけで、お金については別々に管理している場合は生計一とは言えません。

当然ですが生計一に該当しない場合は建物に関する費用を必要経費に算入することができません。

建物の使用料を支払っていた場合

建物の使用料を支払っていた場合の取り扱いについて確認しましょう。

所得税法56条に事業主と生計を一にする親族が事業から対価の支払いを受ける場合には、その対価の額は、原則としてその事業主の事業所得の金額の計算上必要経費に算入しないこととされています。

また、所得税法基本通達56-1には生計一親族の資産に係る経費は事業主の必要経費算入するものとされています。

つまり、建物の使用料を支払っていたとしても、その対価の支払いは無かったものとし、さらにその建物の減価償却費や修繕費等は個人事業主の必要経費に算入することができます。

建物をプライベートにも使っている場合

建物を事業にもプライベートにも使っている場合おいて、事業に使っている部分について合理的に区分をすることができれば、その事業部分に対応する費用は経費にすることができます。

例えば2階建ての建物の1階部分を事業に使い、2階部分を住居として使っていたとします。(面積は各階等しいものとします)

その場合は建物に係る費用の1/2については必要経費とすることができます。

ポイントとなるのは合理的な区分です。事業には使っているけれどプライベートと区分が難しい場合は経費に算入することができませんので注意しましょう。

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費用の早期計上をするなら中古資産

建物や機械、車両などの固定資産は減価償却費として必要経費に算入されます。

減価償却費の計算において重要となるのが耐用年数です。

資産の種類ごとに法定耐用年数というものが決まっています。

例えば自動車であれば6年、パソコンであれば4年、事務所用の木造建物であれば24年です。

この耐用年数が短ければ短いほど費用を早期計上することができます。

中古の減価償却資産については法定耐用年数を使わず、使用可能期間として見積もられる年数で減価償却を行います。

しかし、中古資産の使用可能期間を見積もることは困難であり、実務上は簡便法という方法で耐用年数を計算します。

法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20%に相当する年数

法定耐用年数の一部を経過した資産

その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

これらの年数に1年未満の端数があるときはその端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合は2年とします。

具体例
法定耐用年数:24年
経過年数:10年
簡便法による耐用年数:24-10+10×20%=16年

耐用年数が短い方が早期に費用処理がされ節税になる場合があります。

4年落ちの中古自動車が節税になるという話は聞いたことがありませんか?

自動車の法定耐用年数は6年なので4年落ちの中古車であれば耐用年数は2年となることを指しています。

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まとめ

生計一親族の資産を使った場合は、その資産に係る費用は必要経費に算入することができます。

重要な点は「生計一」です。一つの財布で生活を共にしていなければいけません。

これらを理解し、確定申告の際に費用がもれないようにしましょう。