免税事業者がインボイス制度の導入に伴い、課税事業者に移行するケースは多いかと思います。

その場合、頭を悩ませるのは消費税の負担が生じることでしょう。実は消費税の計算方法は原則的な計算方法である本則課税と売り上げ規模の小さい事業者に認められた簡易課税という方法があります。

この記事では簡易課税とはどういう制度なのか、節税になるのか、どういった手続きが必要になるのか、適用を受けるにあたっての注意点について解説します。

インボイス制度の導入に不安を抱えている方は是非この記事をご覧ください。

簡易課税は節税になるのか?

消費税を理解するうえで仕入税額控除という制度への知識は欠かせません。納税額への計算にも影響があるため非常に重要です。

仕入税額控除とは

消費税の原則的な計算方法である本則課税とは、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を控除した残額を納税する消費税として計算します。この仕入に係る消費税を控除することを仕入税額控除といいます。

インボイス制度においては免税事業者からの仕入については仕入税額控除ができなくなることになります。

簡易課税の仕組み

本則課税においては実際に支払った消費税額を基に仕入税額控除を計算します。これに対し簡易課税は売上に係る消費税額に業種ごとに決められたみなし仕入れ率を乗じて仕入税額控除を計算します。

業種ごとのみなし仕入れ率は以下の通りです。

  • 第一種事業 卸売業 90%
  • 第二種事業 小売業 80%
  • 第三種事業 製造業 70%
  • 第四種事業 いずれにもあてはまらない事業 60%
  • 第五種事業 サービス業 50%
  • 第六種事業 不動産業 40%

どんな事業者が簡易課税を選択すべきか

課税仕入が少ない事業者は簡易課税の方が税務上有利なため節税になります。たとえば経費の大部分が従業員の給料であるような事業者やそもそも経費が発生しない事業者などが該当します。

本則課税と簡易課税がそれぞれどのくらいの納税額になるかシミュレーションしたうえで選択しましょう。

インボイス導入で簡易課税の手続き期限が緩和

簡易課税を選択する場合は簡易課税制度選択届出書を税務署に提出しなければなりません。インボイス制度の導入に伴い通常と異なるルールがあるため注意しましょう。

インボイス制度導入により届け出期限に特例措置が設けられている

原則的な取り扱いは、適用を受けようとする課税期間開始の日の前日まで簡易課税制度選択届出書を納税地の所轄税務署長に提出することが必要です。

免税事業者がインボイス登録に合わせて簡易課税制度を適用しようとする場合の届出書の提出期限は登録を受けた日を含む課税期間の末日までに提出すれば大丈夫です。

たとえばインボイス制度開始日である令和5年10月1日から登録を受けて課税事業者になる個人事業主の提出期限は、令和5年12月31日です。

簡易課税制度の注意点

基準期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者しか適用を受けることができない

基準期間とは個人事業者にあってはその年の前々年、法人にあってはその事業年度の前々事業年度です。このような制限があるのは簡易課税制度は中小事業者の事務負担を軽減するために設けられた制度という理由があります。

2年の継続適用、設備投資がある場合に注意

簡易課税制度は2年間の継続適用をしなければなりません。簡易課税を選択した翌年に本則課税に変更することはできません。

設備投資がある場合は本則課税が有利になることが多いです。設備投資を行う前年から簡易課税制度を選択してしまうと設備に係る消費税額の控除を受けることができなくなり税負担が増すこともあります。

簡易課税の選択をやめる場合は簡易課税制度選択不適用届出書をその適用を辞める課税期間開始の日の前日までに提出しなければなりません。

まとめ

簡易課税が本則課税より税負担が低いというケースは少なくありません。ただし必ずしも簡易課税が有利とは限りません。しっかりシミュレーションをしましょう。

インボイス登録と合わせてしなければいけない手続きがあります。期限もありますので忘れずに行うことが重要です。

インボイス導入により免税事業者が課税事業者に転換する場合、自社の状況にあった対策を講じましょう。