この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは。札幌の税理士の青木です。

銀行融資を受けるにあたって、企業の返済能力というのは非常に重要です。

なぜなら銀行としては貸した資金の返済がされないという状況を避けなければいけないからです。

とはいえ、どのようにして返済能力を測るかご存知でしょうか?

この記事では銀行融資における債務返済能力について解説します。

銀行融資を受ける際、企業の返済能力は極めて重要な要素です。

銀行は貸し出した資金が確実に返済されることを重視しますが、その返済能力をどのように評価するのでしょうか?

具体的には、債務償還年数、インタレストカバレッジレシオ、償却前営業利益(EBITDA)といった指標が用いられます。

これらの指標は、企業がどの程度の期間で借入金を返済できるのか、利息支払いの余裕がどれだけあるか、そして本業からどれだけのキャッシュフローを生み出しているかを示します。

本記事では、これらの指標の意味と計算方法、そしてそれぞれの指標が示す企業の財務状況について詳しく解説します。

債務償還年数とは

債務償還年数={借入金ー(売掛債権+棚卸資産ー買掛債務)}÷(経常利益+減価償却費ー法人税等)

債務償還年数は上記の算式で計算します。この指標は、企業の財務健全性を評価するために非常に重要です。

債務償還年数は借入金をどのくらいの年数で返済できるかを表しています。

年数は短ければ短いほど企業の返済能力が高いと見なされます。

債務償還年数が短いことは、企業のキャッシュフローが健全であり、財務状況が安定していることを示します。逆に、債務償還年数が長い場合、企業の返済能力に不安があると見なされることがあります。

一般的には、企業の規模や業種によって異なりますが、債務償還年数が10年以内であることが望ましいとされています。

ただし、不動産業や製造業など設備投資が大きい業種においては債務償還年数が大きくなる傾向があるので必ずしも10年以内にこだわる必要はありません。

インタレストカバレッジレシオとは

インタレストカバレッジレシオとは企業が利息を支払う能力を示す指標で次の算式で計算します。

インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+受取利息+受取配当金)÷支払利息

会社の借入金等の支払利息を支払う能力を測るための指標で、数字が高いほど支払い能力が高いとされています。

インタレストカバレッジレシオが1.0を下回ってしまうと、利息の支払いをするための十分な利益を確保できていないということになってしまいます。

そのような場合、返済能力に問題があるとみられることになります。インタレストカバレッジレシオは1.0以上あるのは最低条件で、2~3が標準的といえます。

償却前営業利益とは

償却前営業利益=営業利益+減価償却費

償却前営業利益は企業の本業の利益を示す指標で、キャッシュフローに近い指標です。

なぜ減価償却費を足すかというと減価償却費そのものは資金の流出を伴わないからです。減価償却費は過去に取得した固定資産の取得原価を耐用年数にわたって費用処理しているものになります。

返済能力を上げる方法

返済能力を上げる方法について確認しましょう。

・利益を増やす

まず、最も基本的な方法は利益を増やすことです。利益が増えれば返済能力も自然と向上します。これは企業の収益力を高めるための根本的なことであり、返済能力を上げる裏技は存在しないとも言えます。

・減価償却費を操作しても返済能力にはつながらない

減価償却費は税法で認められた範囲の金額であれば、企業が決めることができます。そのため、減価償却費を計上しないで利益を増やすことによって、見せかけの返済能力を上げるという方法があります。

しかし、この方法は融資審査においては効果がありません。

なぜなら、融資をする銀行は減価償却が決められた方法によって行われているものとして計算をし直すからです。減価償却費を0にした決算書においても、通常通りが減価償却をしたものに修正して融資の審査を行います。

・繰り上げ返済をする

繰り上げ返済をすることによって借入金を減らすと債務償還年数とインタレストカバレッジレシオに良い影響があります。

ただし、返済資金が必要になりキャッシュフローの悪化を招く可能性があります。もし、融資を目的とした返済能力向上のために繰り上げ返済をするのであれば、本末転倒となることがあるので注意しましょう。

まとめ

銀行融資において返済能力は最も重視される要素であると言っても過言ではありません。

銀行は貸し出した資金が確実に返済されることを保証するために、企業の返済能力を厳密に評価します。返済能力が高い企業は、銀行からの信頼を得やすく、融資条件も有利になる傾向があります。

もし、融資を受ける際に自分の会社の返済能力がどの程度のものかを知りたい場合は、今回解説した3つの指標を用いて計算してみてはいかがでしょうか?

債務償還年数、インタレストカバレッジレシオ、償却前営業利益を活用することで、企業の財務健全性を客観的に評価することができます。これらの指標を理解し、適切に活用することで、銀行からの融資をスムーズに受けるための準備が整います。

企業の財務状況を正確に把握し、返済能力を向上させるための戦略を立てることは、長期的な成長と安定を実現するために不可欠です。ぜひ、これらの指標を活用して、健全な財務運営を目指してください。