この記事の執筆者

税理士 青木征爾 
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする

こんにちは。札幌市豊平区の税理士の青木です。

銀行融資の条件をよくするために会社の決算書の内容は重要です。
より良い条件で融資を受けるために粉飾決算に手を出してしまうという話は耳にすることがあります。

しかし、粉飾決算は必ずバレます。
粉飾決算をすると痕跡が残るため、銀行は粉飾決算を見破ります。

この記事ではよくある粉飾決算の手法と、それを発見する方法について解説します。

良い条件で融資を受けたい気持ちはわかりますが、粉飾をすることは絶対にいけないことです。

なぜ粉飾をするのか?

粉飾とは企業の業績を実態よりよく見せることを言います。

銀行は返済能力のない会社には融資を行いません。
また、実績のある会社の方がよりよい条件で融資を行います。

そのため良い条件で融資を受けるために粉飾を行ってしまう企業というのは現実に存在します。

棚卸資産の過剰計上

実際にどのような方法で粉飾を行っているのかを確認していきましょう。

ひとつめに解説する内容としまして、棚卸資産の過剰計上というのものがあります。

商品を仕入れた場合において、その金額が一度に経費になるわけではありません。
たとえば100万円分商品を仕入れたとして、その半分の50万円分の商品を200万円で売却した場合の利益はつぎのような金額になります。

売価200万円ー原価50万円=利益150万円 
原価=仕入100万円―棚卸資産50万円=50万円

では上記のケースで棚卸資産を過剰に計上し70万円とした場合での利益額を確認しましょう。

売価200万円ー原価30万円=利益170万円 
原価=仕入100万円―棚卸資産70万円=30万円

棚卸資産を過剰計上するとその分原価が減るため利益が増えることになります。

このような粉飾をしてしまうと原価率が急に下がってしまいます。
また棚卸資産÷月商で算出する棚卸資産回転期間といった指標も不自然に大きくなります。

棚卸資産の過剰計上による粉飾は一見簡単そうに見えますが必ず発見されます。

売上の過大計上

ふたつ目は売上の過大計上です。
売上が大きくなれば会社の取引規模も利益も大きくなり、決算書の見栄えも良いものとなります。

ただし、売上が計上されるということは同じ金額の売掛金が計上されます。
粉飾により計上された売掛金は回収されることなく滞留し続けることとなります。

銀行に提出する決算書には勘定科目内訳書といって、決算書の内容について記載したものを添付することが一般的です。

売上の過大計上をした場合、この勘定科目内訳書に滞留した売掛金が計上されることになります。

また、先ほどの棚卸資産の過剰計上と同様に売上原価に異常が生ずることとなるため、粉飾の痕跡は架空の売掛金の計上以外にも残ることになります。

売上の前倒し

売上を前倒しすることにより利益を大きく見せる手法です。

会社の本来の売上なので先ほどのような架空の売上ではありません。
売上に対応する原価も計上することになるので原価率の異常も生じません。

一見すると見つからないように思えますが、銀行には法人事業概況説明書という書類を決算書と一緒に提出します。この書類には月ごとの売上を記載する欄があります。売上の前倒しをした月だけ売上に異常な金額が計上されることになります。

そのような場合には銀行から売上の請求書の提示を求められることもあります。

費用の除外

利益というのは売上ー経費で計算します。
利益を大きくために経費を除外するという粉飾があります。

経費を計上すればそれと同額の現金が減少します。
たとえば5万円のプリンターを購入したとしましょう。

簿記的な表現をすると次のようになります。
消耗品費/現金 ¥50,000

この取引を帳簿に記載しないことが費用の除外による粉飾となります。

経費を除外してしまうと本来減少するはずだった現金が決算書上に残ることになります。

過大な現金が決算書に残ると非常に目立ちます。
その会社に本当にその金額の現金があるのか?
この決算書は信頼できるものなのか?
社長が私的に資金を流用しているのではないか?
様々な疑念がわいてしまいます。

費用の除外に限った話ではないのですが、銀行が粉飾を疑ったとしてもそれを会社に教えてくれるわけではありません。

現金残高が多かったからといってその内容について質問が無い場合もあります。
そういった場合であっても問題なしとみているのではなく、その分について修正して決算書を見ています。

なにも言われなかったからOKというわけではないので注意しましょう。

減価償却費の未計上

固定資産を購入した場合、その購入費用は取得時に全額経費になるわけではなく、その資産の法定耐用年数に応じた期間に費用化されます。

このことを減価償却といいます。

この減価償却ですが法人にあっては税務上は計上するかどうかは任意となっています。
そのため減価償却費を計上しないこと自体は大きな問題ではありません。

しかし、計上していない場合は銀行は償却費を計上しているものとして決算書の数字を読みます。

他の粉飾と違い税務上は認められている処理ではあります。しかし、理由なく減価償却費を計上しないということはあまりありません。そのため、計上しない場合は銀行から質問をされても良いように準備をしておきましょう。

税務上の問題点

実は粉飾というのは税務上問題になることはそれほど多くはありません。

粉飾をすると利益が出ます。多くの税金は利益に対して課税されます。
そのため粉飾をすることにより、本来より多くの税金を支払うことになります。

本来支払う税金より少なく支払っているわけではないので税務上問題になることはそれほど多くはありません。

だからといって粉飾は認められるものではありません。

一度手を出すと戻すことがむずかしい

粉飾をしてしまうとその痕跡が残ります。
一度粉飾をしてしまうとその痕跡を消すことは非常に難しいです。

そればかりではなく信用を失ってしまいます。
失った信用を取り戻すことは粉飾の痕跡を消すこと以上に難しいです。

まとめ

繰り返しになりますが粉飾は必ず見つかります。

しかも銀行が粉飾に気付いたとしてもそれを教えてくれるわけではありません。
一度粉飾をする会社というレッテルを貼られてしまうと払拭することは非常に困難です。

有利な条件で融資を受けるために粉飾をするのかもしれませんが、かえって条件を悪くすることもあるかもしれません。