この記事の執筆者

税理士 青木征爾
札幌市を中心に活動
新規創業支援や中小企業の経営支援、相続業務を得意とする
こんにちは。札幌の税理士の青木です。
中小企業が成長を遂げるためには、適切な資金調達が欠かせません。
その中でも多くの企業が銀行融資による資金調達をしています。
「融資=借金だから悪」と考えている方も多いかもしれませんが、融資を受けることには多くのメリットがあります。
融資を受けることにより、必要な資金を迅速に調達し、事業拡大や設備投資を早期に行うことができます。また、融資を受けることでキャッシュフローを改善し、日々の経営活動を円滑に進めることができるため、事業に集中することができます。
無借金経営の安心感も理解できますが、借金経営のメリットを最大限に引き出すことで、中小企業は成長を促進し、競争力を高めることができます。借金経営の利点を活用し、成功への道を切り開きましょう。
会社がつぶれるのは資金がショートしたとき
企業が倒産する主な原因は、赤字経営ではなく資金ショートです。赤字が続いても、手元に十分な資金があれば事業を継続することができます。
しかし、資金ショートが発生すると、従業員の給与や仕入れ先への支払いが滞り、事業運営が立ち行かなくなります。
特に創業して間もない企業においては、赤字が続くことが多いです。
新しいビジネスモデルや新規事業に挑戦する際には、初期投資や運転資金が必要となり、収益が安定するまで時間がかかることが一般的です。
このような状況で自己資金だけで経営を続けると、資金ショートを起こし、倒産してしまうリスクが高まります。
また、多くの企業が売上の入金よりも先に経費の支払いがあります。
例えば、製品を製造するための原材料費や、サービスを提供するための人件費など、先行して支出が発生します。
売上は受注したけれども、経費の支払いができなくて黒字倒産ということも起こりえます。
黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、現金が不足して支払いができずに倒産することを指します。
このような資金ショートのリスクを回避するためには、資金を潤沢にすることが重要です。
そのための一つの方法として、融資を受けることが挙げられます。
融資を受けることで、必要な運転資金を確保し、キャッシュフローを安定させることができます。
これにより、突発的な支出や売上の変動にも柔軟に対応でき、事業の継続性を高めることができます。
返済実績があると次回の融資に有利
融資を受け、それを返済すると次回以降の融資に有利に働く場合があります。
信用力の向上
返済実績がある企業は、銀行からの信用力が高まります。銀行は融資を行う際に、企業の信用力を評価します。
過去に融資を受け、その返済を滞りなく行った実績がある企業は、信用力が高いと判断されます。これにより、次回の融資申請時に審査がスムーズに進みやすくなります。
信用力が高い企業は、銀行からの信頼を得やすく、より良い条件で融資を受けることができる可能性が高まります。
例えば、それまでは信用保証協会付きの融資だったものがプロパー融資になったり、利率の引き下げがされる場合などがあります。
審査の迅速化
返済実績がある企業は、銀行の審査プロセスが迅速化されることがあります。
銀行は過去の事業実績を基に企業の信用力を評価しますが、既に融資を受けている場合は過去の経営成績や財再状態を既に把握した状態から審査が始まります。
そのため、審査にかかる時間が短縮されることがあります。これにより、必要な資金を迅速に調達することができ、事業の機会を逃さずに済みます。
融資を受けるために重要なこととは
融資を受けるにあたって重要なことは次のふたつです。
- ・決算書
- ・事業計画
融資においてよい決算書、よい事業計画というものがどういったものかを説明します。
融資によい決算書
決算書とは会社の財政状態や経営成績を表したものです。
企業の財務状況を詳細に示すこの書類は、銀行や金融機関が融資を判断する際に非常に重要な役割を果たします。
融資においては安全性、収益性、成長性、返済能力といった観点から評価を行います。
これらの評価基準を満たす決算書を作成することで、企業は銀行からの信頼を得やすくなり、融資を受ける可能性が高まります。
・安全性
安全性は企業の財務の健全性を示す指標です。特に重要とされるのは純資産です。
純資産が潤沢な企業は、自己資本が充実しており、財務的に安定していると判断されます。
自己資本比率が高いほど、企業は借入金に過度に依存していないといえるため、銀行は融資のリスクが低いと評価されます。
・収益性
収益性は企業の収益力を示す指標です。経常利益や総資産に対する経常利益の割合などで評価を行います。
これらの指標は、企業の経常的な活動から得られる収益力を示します。経常利益が安定している企業は、事業運営が健全であり、将来的にも安定した収益を見込めると判断されます。
特に、過去数年間にわたって利益が計上されていれば、銀行は起業の活動の安定性を評価しやすくなります。
・成長性
成長性は企業の将来的な成長可能性を示す指標です。
企業が持続的に成長していることを示すためには、売上高の増加や経常利益や純資産額の増加が重要です。
これらの数字が安定的に増加している場合に、銀行は企業が将来的にも成長を続ける能力があると判断し、融資を受けやすくなります。
・返済能力
返済能力は企業が借入金を返済する能力を示す指標です。
融資において最も重要な指標と言えます。返済能力は債務償還年数や償却前営業利益などで判断されます。
債務償還年数とは借入金を現在の利益で返済する場合どのくらいの年数がかかるかというものです。
償却前営業利益で判断する理由としては、減価償却費は金銭の支出が無い費用のため、返済能力につながるものとして取り扱います。
このように安全性、収益性、成長性、返済能力が高いものが良い決算書と言えます。
事業計画
事業計画において重要なのは「やりたいこと」「できること」「ニーズ」です。
これら3つの要素をしっかりと理解し、バランスよく組み合わせることが重要です。これらの要素について詳しく説明します。
やりたいこと
「やりたいこと」は、事業者のビジョンや目標、情熱を反映したものです。
これは事業の方向性を決定し、企業のアイデンティティを形成します。
やりたいことを明確にすることで、事業の目的や目標が明確になり、従業員やステークホルダーに対して強いメッセージを伝えることができます。
明確な目標や目的があれば困難を乗り越える原動力となりえます。
できること
「できること」は、企業の能力やリソース、技術を反映したものです。これは事業の実現可能性を評価するために重要です。やりたいことがあっても、それを実現するための能力やリソースがなければ、事業は成功しません。
技術とノウハウ: 企業が持つ技術やノウハウは、競争力の源泉となります。これを活用して、他社との差別化を図ることが重要です。
リソースと資源: 人材、資金、設備などのリソースが十分にあるかどうかを評価することが必要です。これにより、事業の実行可能性が判断できます。
経験と実績: 過去の経験や実績は、事業の信頼性を高める要素です。これを基に、新しい事業の成功確率を高めることができます。
ニーズ
「ニーズ」は、顧客や市場の需要を反映したものです。これは事業の市場適合性を評価するために重要です。
どんなに素晴らしいアイデアや技術があっても、市場のニーズに合わなければ、事業は成功しません。
競合他社の動向を分析し、自社の強みを活かして競争力を高めることや顧客のニーズや市場の動向を調査することが重要です。
事業計画を成功させるためには、「やりたいこと」「できること」「ニーズ」の3つの要素をバランスよく組み合わせることが重要です。やりたいことは事業の方向性を決定し、できることは事業の実現可能性を評価し、ニーズは市場適合性を評価します。
これらの要素をしっかりと理解し、事業計画に反映することで、企業は持続的な成長を実現し、競争力を高めることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
無借金経営というのは確かに安心する部分はあると思います。
しかし、事業の発展、資金繰りを強化するという点を考えると融資を受けるということは非常に有効といえるでしょう。
繰り返しにはなりますが、企業が倒産する主な原因は資金ショートであり、赤字経営ではない点が重要です。
資金ショートを回避するためには、融資を受けて運転資金を確保し、キャッシュフローを安定させることが必要です。
特に創業して間もない企業においては、初期投資や運転資金が必要となり、収益が安定するまで時間がかかることが一般的です。